深い川は静かに流れる

庭園や建築、自然を求めて 彷徨うひとり旅 相棒はFUJIFILM X-E3

継承のかたち(一条恵観山荘)

 古都、鎌倉。

 

 休日の昼前、鎌倉駅に着くとそこは想像以上の賑やかさで、人だかりから逃げるようにバスへ乗り込む。

 

 今日の目的地は、一条恵観山荘。

 

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 外観だけ見ると田舎にありそうなお屋敷だ。

 週に一度ほど建物の見学会があるそうなのだが、この日はお休み。その実こだわりの詰まった内装は見学の価値ありとのこと。

 

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 軒先の庭園は苔が鮮やかで美しい。

 

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 紅葉の季節はもちろん、種類さまざまな紫陽花が花開く梅雨時も見所。しかし季節柄か、信じ難いほどの静寂に包まれた庭園をこの日はずっと一人占め。

 

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 敷地の隣を流れる滑川のせせらぎが、園内の流れとともに風光明媚な景色をより色濃くする。

 

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 若々しさを感じる竹林。

 

 

 鎌倉の自然に調和したこの一条恵観山荘、実は元々400年ほど前、京都の西賀茂に建てられたものである。

 

 以前訪問した三渓園も移築された歴史的建造物が多く残るのだけれど、ここは…?

tranagi.hatenablog.com

 

 一条恵観(いちじょうえかん)は江戸幕府成立間もなく、後陽成天皇の第九皇子として生を受ける。後に跡継ぎのいない一条家の養子として摂政や関白を勤めた。

 文化芸能にも幅広く精通し、別邸として作られたこの茶室も自身で細部まで指示をして作らせたとか。

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 しかし、一条恵観山荘は時の流れでいつしか忘れ去られ、戦後、その地を追われることになって初めてその価値が認められたという。

 

 

 

 

 

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 この地に移築され間もなく、建物が国の重要文化財に指定される。

 

 

 

 今では文化財の保護は進み、法律も整備されたけれど、歴史的価値だけで建物は存続するものではない。

 

tranagi.hatenablog.com

 

 その地や建物を維持する人々がいて、そこを訪れる人がいて、人の歴史が伝承されることで文化は継承されていく。

 

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 鎌倉の歴史には負けるけれど、鎌倉では建築当時の建物が現存しているのは貴重なのだそうだ。

 

 

 受付で頂ける手書きの園内案内図を持って、あなたも散策してみてはいかがでしょうか。

 

 現在も公開日は週に2、3日程度なので、訪問の際は公開スケジュールを確認してくださいな。

 

ekan-sanso.jp

 

 

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 写真中央の右手、植え込みの後ろにある藁細工は「藁ボッチ」といい、植物を霜から守るのだそう。

 ボッチ…?